第89章 私、精神的にどこかおかしいのかな

長谷川栞の薄い笑みは、すでに礼儀として貼り付けた作り笑いだった。高野咲子の紹介で来たとはいえ――。

(この人……信用できるの?)

高橋由紀はワイングラスを持つ手を、ほんのわずか止めた。長谷川栞が妊娠しているとは、想定していなかったのだろう。

栞は会社から直行してきたらしい。タイトなスーツワンピースに身を包み、隙のない「できる女」の気配をまとっている。

こういう都会の女性エリートは仕事を最優先にする。勤務中に妊娠――それだけでも、相当な負担だ。

由紀は自分に赤ワインを注ぎ、栞には水を軽く注いだだけにした。

背が高く細身。白衣を着ているせいか雰囲気は柔らかい。金縁の眼鏡が、もともとの...

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